元々は「香ほづ木」として公開していた話の前半を、五年目まで公開後の推敲時に、小間物屋パートのみ取り出して再構成したものです。
・サブタイトル
生きる術というそのまま。
・段落1〜3/小間物屋
てきぱき紅花、幾分ぶっきらぼう。
壬の中心の、更に奥底にいた暁には、日の下でも黒髪黒目というのは異質なもの。ただし自分が異分子という自覚はない。
坡城は(特に家のある辺りは)色々混ざっていますが、主に黒。壬は、南は焦茶で背が低め。飛鳥に近くなるほど背が伸びる傾向。
・段落4〜5/釣銭
店は、紅花の手に渡る前よりも雑多なものを置いている印象です。奥隅に張子とか置いてるんじゃないだろうか。
暁はマニュアル派、時間をかけてきちんと覚えてから動くタイプ。
客の相手の仕方も知らないから、客の手から断りも無しに品物を取り上げたりする。
ところで、何でも聞けという割に、上司の手が無かったり追い立てられたりして、聞きにくい状況に陥ることはよくある気がします。
坡城の金の制度も、このエピソードを入れるまではどこにも書いていませんでした。
朱ごろ=しゅごろ、赤くて丸い。
鈍ひら=にびひら、薄黒くて平べったい四角。
・サブタイトル
玉串=榊=坡城。
元タイトル「紅花」。
・段落1/玄関
ずっと紅花のペース。
書き直すまでは誰もかれもが暁に同情的・好意的だったので、様々なシーンで転換。
・段落2/部屋・手当
浬も入ってきたばかりで肩身が狭いころは苦労したんだなー(相手が針葉に限らず)とか思ってもらえれば。そんなわけで、いざ家に来てみれば浬はちょっと暁寄り。
無駄なもののない黄月の部屋。
自分から命を断とうとする身勝手さと、それで家の者が傷ついたことで、暁に睨みをきかせる黄月。対する暁も、彼にしか分からない嫌味(北の訛り)で応戦。
暁はとても耳がいい。
・段落3/紅兄妹
暁の来ていた男物の服は骸から剥いだもの。彼女にはない血が染みている。
改めて暁について訊かれて、同情的な立ち位置から中立な立場に戻る浬。自分が言ったとおり、「残り家狩りのうろつく中で十日間生き延びた暁」に不審をいだく。
紅花の苛立ち。
暁は姿勢がいい。対比で出てくる黄月は長身あいまって猫背。
・段落4/ちゃたろ
元々猫は違う名前でした。
戸口に近い右手の部屋は織楽のもの。蒐集家、季春座で忙しい。
猫に話しかけているのを紅花に聞かれる、というのは確か初期からあった流れ。
「大火で」そう繰り返す暁は、むしろ自分に言い聞かせている。
受け取った着物を自分の前に置くのは、紅花と距離を取るため。
じっくり悩み考えた末に話す暁と、思ったそばから口に出す紅花。
暁と紅花の認識の違い。
紅花は両親や養父母が殺されたことや、長を失ったことから、死を身近なものとして感じている。しかしそれはあくまでも抽象的なもの。自分から少し離れたところに、ざっくりと突然命の終焉が切り込みを入れているイメージ。
だから彼女にとっての死はあくまでも命の終わり、性別を偽ったところで逃れられないもの。
暁は紅花と違い、自分に直接ぶつけられた憎しみを恐れている。それは実際の命の終わりというよりも、その前に佇む絶望や、辱め、尊厳の死。紅花のものより鈍い痛みだが、肌で生々しく感じてきたもの。
二人とも立ち位置が違うだけで、言っていることは真っ当なんです。
2018年02月15日(Thu) ◆ none
・サブタイトル
斃れた壬の意。
元タイトル「浬」、浬の一人称で進む形式でした。
書き直すにあたって一人称か三人称かで迷っていたので、この話だけ浬視点バージョンがあります。
・段落1・2/針葉と浬
火事場泥棒。黄月と織楽が東雲でやっていたのと同じ。今回は壬南部を徹底的に叩かれたり、壬の最期に固執していた黄月が体調不良だったり、色々あって入るのが遅くなったもの。
・段落3/暁
十日経ってなお壬に留まっていた暁の奇妙さ。
針葉をやり過ごせるならそうした、やはり死は恐ろしい。しかし近付いてきたので(そして飛鳥びとだと信じているので)自害の道を選ぶ。
死を躊躇った結果訪れるもの、誇りの喪失や凌辱をより強く恐れる。
痩けた頬といっても、大火から十日経ったその時、見た目に痩けているだけで動けるのがおかしい。
・段落4/自己紹介
怪訝・不安な様子で斜め上を見るのがこの先一年くらいの暁の定番。
暁の自己紹介は意図せずして途中で遮られています。
・段落5/宵
・段落6/坡城
特になし。