QUASAR  了



 実質七日ほどで書き上げました。その分、感覚で書いていた部分が多い話でした。



 - - - 解放の日
 母親はレミア、子供は詩歌。
 解放というのは、レミアの死と共に解放された紫苑視点です。

 - - - 驚嘆の日
 今まではいつも、後になればなるほど設定が加わっていましたが、この話では「煙のせいで落ちた」というのを加えただけです。
 最後まで読んで頂けたら分かると思いますが、レミアの父さんは紫苑です。
 だから顔を隠す、声から詩歌(=紫苑)を連想する。レミアとヒースの恋に賛成だった。
 でも、だからこそファンタジーだとしても説明のつかない話になってしまう。紫苑とキリエの子がレミア、その子が紫苑と。

 - - - 疑惑の日、邂逅の日
 もともと一話でした。
 意外な仮説をいとも簡単に立てるレミアの父さん。その理由はこの人が紫苑だから、それに尽きます。
 でもそうすると、一番最初に教えたのは、ということになってしまう。繰り返し。
 紫苑と詩歌の話もそうです。最初にいた詩歌は、レミアの中を体験してきた紫苑。最後にいた紫苑は、これからレミアの中を体験する紫苑。繰り返し。始まりも終わりも無い。
 紫苑の周りで世界が閉じているようにも見えます。その中をぐるぐる回り続けるだけ。

 - - - 妥協の日
 最初は二重人格(解離性同一性障害)と書いていたのですが、全く違うものであるので、そういった言葉は全て書き直しました。

 - - - 喪失の日
 真実の日と二つで一話だったのですが、量が多くなったので二つに分けました。
 自分で書いておいてなんですが、ヒースはどうしようもない人ですね。蝶使いの寿命がみな一様に短いことはレミアも知っており、その上で結婚したのであると祈っています。

 - - - 真実の日
 ファニアとチェリアが詩歌と紫苑になった理由。なんて強引なんでしょう。
 レミアや双子の正体に気付いていた方は多いのでは。

 - - - 決別の日
 墓の花が枯れておらず、村人全員が帰ってきた詩歌に驚かなかったということは、お婆さまはひとり詩歌の死を隠し、死ぬ直前まで、崖を降りては墓参りをしていたということでしょうか。パワフルですね。
 もう二度と逢えない片割れ。何を伝えたくてももういない、それどころか今度は自分が頼られる側。
 これから旅立つ紫苑がいたから生きていたものの、実際ギリギリだったのではないでしょうか。

 - - - 運命の日
 終わり、そして繰り返し。
 恋が生きる原動力になったようです。でもレミアの変人父さんとして、まだまだ繰り返しは続きます。



   Character

 ZIONはキリスト教・ユダヤ教・イスラム教の聖地であり、概念としての天国・楽園という意味も持ち合わせた言葉です。
 キャラクター名もそういった由来で統一しています。

  紫苑 [ Zion ]
 原義は天国・楽園。発音記号は調べちゃだめだ。
 茶金の目・髪。周りの時間と空間が歪み、その中を漂っている感じ。オリキャラながら可哀想。

  詩歌(紫苑)
 外見特徴は紫苑そのもの。精神的には紫苑より八つ年上なので、とても大人びた子だったのでしょう。

  レミアパパ(紫苑)
 布で顔を隠した人であり、紫苑であります。
 周りには、顔を怪我したからとか言い訳をしていたのでしょう。わざと傷をつけたのかもしれません。


  詩歌 [ Shiika ]
 聞き間違い。響きとしては好きな名前です。

  レミア [ Remiah ]
 ヘブライの預言者のエレミヤ(Jeremiah)より。
 赤茶の目・髪。優しい娘さん。紫苑とキリエの娘、紫苑と詩歌の母。

  ヒース [ Heath ]
 キリスト殉教者に捧げる花の名。
 薄命。体は強い方ではなさそう。とにかく優しくて愚かな人。

  キリエ [ Kyrie ]
 原義はミサに用いる音楽。レミアママ。外見特徴はレミアと同じ。

  チェリア [ Cheriah ]
 ヘブライの預言者ゼカリア(Zechariah)より。紫苑の本名。

  ファニア [ Phaniah ]
 ヘブライの預言者ゼパニア(Zephaniah)より。詩歌の本名。

  ウィル [ Will ]
 由来は無し。キリエの女友達の子、レミアの幼馴染。レミアのことは好きでも、妹のような存在だったのでしょう。



 ややこしい部分の多いこの話を読み、ここまで辿り着いて下さって本当に有難うございます。
 なんだかすっきりしない話で申し訳ありません。仕掛け重視で書くとこうなります。
 読んでくれた友人から、崖落ち小説という誠に的確な二つ名をいただいたことをここに記しておきます。
 機会が有りましたら、他の小説も宜しくお願いします。