淡き夢 −泡沫−  了





 淡き夢 第一部、泡沫でした。

 これは元々「Haze〜夢枷〜」として創った、第二部の覬覦とは全く関係の無い話でした。
 原案を考え、ワープロにて書き始めたのは2001年の終わり。ただその時FDの全データが飛んでしまったため、一年以上書くのを止めていたのです(鎖あたりまで書いていたかと)。
 行き当たりばったりだったのを反省し、案を練り直し。覬覦と同じ小説の中で書いてみようと思いつくも、種族が違う、テーマが違う、世界が違う、など問題点ばかりでした。それでも何とかこうして、第一部として書き上げられたことを嬉しく思います。
 三十話という、一つながりの話としては最長のものとなりました。


 各話、書き終わり時の感想やメモなど。

▼ 歪曲 - リンク
 大まかにはワープロ版の再現となっています。大きな違いは、最初の段落追加・ライアやシュアなど脇役追加・王の色々。シュアは唐突にできたキャラ、ワープロ版ではリンクの一人旅です。その代わりリンクを敵視する謎の見張り兵がいました。
▼ 鎖 - チェイン
 最初の朝の情景は、「リンクとの差を付ける・チェインとルナの微妙な関係を書く」を目標に。母子に見えてはいけないし恋人でもない、でも一緒に生活している。そんな違和感を感じていただけたら。ルナに対してのチェインの子供っぽさ。とことんわがままに。
▼ 涼雨 - リンク
 なかなか進まなかった回です。リンクとシュアとの古い関係、二人の国にとっての位置、昔の事件、様々な伏線など。
▼ 渦 - チェイン
「歪曲」で精霊王がしていた姿はチェインのものです。メリッサの夢見がちな部分、チェインの事なかれ主義を全面に出しました。チェインは精霊などの空想話は好きではありません。自分からそういう話をふるのは、話の主題を逸らしたいだけです。
▼ 瑞花 - リンク
 驚くほどすらすらと進んだ回です。シュアの王に対する忠心。それほどでもないリンク、リンクとシュアの親、ヴェイン、ライア。精霊と人間との関係、四つの種族。そして何より、料理の事で誉めた直後にライアを殺したシュア。最初の死ということで、書いていて沈みました。
▼ 卵 - チェイン
 やや難航。最初の夢はライアがシュアに殺される場面です。チェインとルナの険悪ぶりを前面に。実際はチェインが一方的に嫌っている(と思い込んでいる)だけなのですが、それでもチェインがルナを嫌うのにもちゃんと理由があるのだ、と。
▼ 夢占 - リンク
 最初は夢占いそのものの意味で「いみうら」と付けたのですが(イミ=沖縄方言で夢、という単純な理由)、途中で生まれた「斎を先読みする」という思いつきからそれメインで進めました。書き終わるまでに間があったため、書いている最中に様々な設定が加わりました。オーガという女性、斎占師の館、昔の事件、二人の両親の死など。
▼ 埒 - チェイン
 チェイン編に用意したエピソードはリンク編よりも少ないので、段々と行き詰ってきています。セレーネの伏線をチェイン編にも入れてしまおう→二人で神殿へ行くエピソードの準備。ルナへの想いを自分自身に隠し切れなくなり、対するメリッサの恐ろしくなるほどの都合の良さ。
▼ 千入 - リンク
 ゆっくりゆっくり進んでいますが、夜中にシュアが出て行くこと、斎占の館の奥に住むヘネス等の伏線などを含ませています。予期せずして、(話数的に)同じタイミングでリンクとチェインが王都へ向かうことになってしまいました。
▼ 妖 - チェイン
 予想外にゆっくり、どこからか都会に憧れるけれど馴染めはしないチェイン描写が出てきました。都合の良いメリッサに惹かれるけれど焦がれはしないのと似ています。いつの間にかメリッサが宿屋のお嬢さんになっていました。
▼ 零露 - リンク
 最初はシュア視点です。イメージを膨らませるために自分でも地図画像を作ったので、それに従って人間界図を書きました。最後の塊を書いている途中で、王が両親を殺すあたりの筋を作りました(当時はこれが最終的な謎でした)。
▼ 牢 - チェイン
 思いつくのに任せて書いていたら、いつの間にか一話容量の大半を消費していて焦りました。隠された部屋には祭壇を置こうかとか空の臨める部屋にしようかとか考えたのですが、神を映した絵ということに。
▼ 薄雲 - リンク
 チェインと入れ違い、そうでない場合、どちらでも取れるように書いたつもりです。ガイルとの密談はもっと後でも良かったのですが、だらだら続けても意味がないのでここで。
▼ 靄 - チェイン
 これ以上メリッサと過ごしても郷愁がつのるだけだったので、強制送還。どんどん夢と現実がごっちゃに。自分の気持ちに気付くのは早すぎるかと思ったのですが、チェイン編でリンク過去を書くのを決めていたため、この辺りで。
▼ 夜叉 - リンク
 泡沫だけでなく、覬覦や瞳へ向けての土台作りを兼ねました。ちょっと前までいたLというのはルナです。実際に書くまでは、最後のシーンは、本当にシュアが迎えに来るという設定でした。この後のリンクの行動範囲に支障が出てくるため削除。
▼ 刃 - チェイン
 ルナに惹かれる想い、気楽に付き合えるメリッサに傾く想い。ルナを選んだとき、メリッサという現実は夢へと流れてしまったようです。私は、元々メリッサなどいないのではなく、確かに存在するけれどチェインと手を放すことで世界を異にしてしまった、という解釈をしています。
▼ 荊棘 - リンク
 ファイル容量に邪魔されて、書きたいことが十分書けなかった回。ヴェイン逮捕まで書かないと収まりが悪かったので。アーティ大臣の代わりにシュアやガイルを出そうかとも思いましたが、まだ先に取っておきました。
▼ 絡 - チェイン
 メリッサが本格的に消えました。どんどん夢と現実・記憶がごちゃごちゃになっていっています。
▼ 傀儡 - リンク
 勢いで一気に書きました。シュアがどんどん怪しくなってきました。ヴェイン大臣は、名前がよく出てきた割に登場は少なかったので、最大の見せ場ということで。
▼ 晦 - チェイン
 チェインが倒れるのとリンクが薬を飲むのを連動させ、チェイン編でありながらリンク過去編です。一番最初のシーンでの王は、まだ老人の姿を借りています。
▼ 陵遅 - リンク
 一気に書きました。人嫌いたちの住む村は一番何の構想もない場所だったのですが、斎占の館へ向かわせるにはどうしたらいいかと考えているうちにああなりました。
▼ 蝶 - チェイン
 やっぱり一気に。最初の彼はアーティ、リンクやシュアの母親を捕まえてきたところ。次の彼はシュア、セレーネたちを集めてきたところ。時系列でいくと、王と両大臣の謁見が一番最初に来ます。
▼ 産土 - リンク
 やっとヘネスを出せた回。ほとんど場面分けをせずに、構想にあったものをつぎ込みました。ここを「産土」にしたかったのは、ヘネスの部屋や斎占の館がリンクにとっての「産土(生まれた地)」だからです。
▼ 霖 - チェイン
 24話と26話に入れるべき話・入れるべきでない話を考えていて、その結果、夢の描写は全く無くなりました。ルナとチェインの父のシーンは、夫婦にも、二人の本当の関係にも見えるように書いたつもりです。
▼ 滅色 - リンク
 ヘネスの扉の向こうのジェイム、ヘネスの意味。今回の夢は最初に思い出されては困るので、最後に。どんどん伏線を消化していくのが楽しかったです。気持ちの悪い話だなぁと今更思ったりもしました。
▼ 階 - チェイン
 ルナが孤児院にいたという話をここに入れるはずだったのですが、リンクの過去がどうにも長くなったので次に。両親が殺されたのは斎占師の館、精霊側の扉から入りました。
▼ 静寂 - リンク
 説明調になろうが気にせず、詰め込まねばならないもの全てを詰め込もうと書きました。できるだけ多く詰め込むため、会話文だらけです。地の文で書きたいことがもっとあったのに、という気持ちでいっぱいです。
▼ 幻 - チェイン
 色んなところに散らばった伏線を拾い集めてまとめる作業。斜向かいやら握手やらルナの手やら、様々に意味を持たせてみました。氷の季節というのは大変そうですね。
▼ 神罰 - リンク
 色んな伏線を消化しつつ、十日前に水籠から出すはずだったなどの設定は書きながら入れていきました。セレーネは意外と強い子になりました。
▼ 月 - チェイン
 最後にリンク編一話を入れるというのは初期構想からあったのですが、そこからリンク編が始まる=リンク編がチェイン編の未来であるというのは書きながら決まりました。



 長い上に設定だらけなこの話を読んでくださって有難うございました。
 覬覦へ繋がる部分も多くありますので、もし宜しければそちらもお待ちいただけると幸いです。